N くん

 

おいはどんくさかけん

 

自信ばもたせてもらえてうれしかぁ

 

そうぼそりと言った N くん

 

一晩だけ泊まっていった

 

レースの前日だった

 

その年の前期試験の最中に

 

 N くんが死んだって

 

誰もそんな話しは信じなかったけど

 

同じクラスのやつが

 

 N は試験なのに来てないって言うから

 

学務で住所を聞いて

 

行った先の実家で N くんは

 

静かに横になっていた

 

本当に N くんなのか信じられなくて

 

白い布をそっととったとき

 

ちょうどお姉さんがお茶を運んで来られて

 

わぁーっと泣き出した

 

その泣き声で

 

静けさがやぶれて

 

これは現実なんだと

 

信じるしかなかった

 

ボクは N くんに何をしたんだろう

 

あのときのレースのトロフィーは

 

すっかり古びてしまったけど

 

今もまだ棚にしっかり立っている